【アドラー心理学】課題の分離や勇気づけの実践論より理論を大切に

【アドラー心理学】実践論を学ぶ前に理論を抑えることが大切です

皆様は、アルフレッド・アドラーという方によって提唱された「アドラー心理学」をご存じでしょうか。

日本では『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』という書物を一躍有名になりました。

アドラー心理学について尋ねると「課題の分離」「勇気づけ」という言葉が返ってくることが非常に多いです。それもアドラー心理学を基とした大切な考え方ではありますが単なる方法論です。

対人関係などの日常生活においても、方法論に心が奪われることが非常に多いです。しかし、方法論や小手先のテクニックでは問題の根本は解決しません。

仮に対人関係に困っている人が小手先のテクニックで問題が解決しても問題は再発します。対人関係の土台である信頼関係や尊敬ではなく方法論に走っているので当然のことであります。

何事も方法論を学んでいく前に理論を学ぶ方が大切です。ですので、アドラー心理学の理論の枠組みである「5つの基本前提」について今ページでシェア致します。

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【アドラー心理学5つの基本前提】Wikipediaを解りやすく短くしました

Wikipediaでは次のように示されております。

Wikipediaより引用

5つの基本前提(5Basic Assumptions)[編集]

目的論(Teleology)

アドラー心理学では、個人の悩みは、過去に起因するのではなく、未来をどうしたいという目的に起因して行動を選択している、と捉える。アドラー心理学は、認知の歪みがある人や、感情と言動に不一致がある人に対して有効であり、周囲の同調圧力が煩わしければ、いっそのこと関係性を切り、自分が本当に歩みたい人生を、主体性に積極的に生きていくことを推奨している。

個人の主体性(Creativity)

アドラー心理学では、個人を、例えば、心と身体のような諸要素の集合としてではなく、それ以上分割できない個人としてとらえる。したがって、アドラー心理学では、心と身体、意識と無意識、感情と思考などの間に矛盾や葛藤、対立を認めない。それらは、ちょうど自動車のアクセルとブレーキのようなものであって、アクセルとブレーキは互いに矛盾し合っているのではなく、自動車を安全に走行させるという目的のために協力しているのと同じように、個人という全体が、心と身体、意識と無意識、感情と思考などを使って、目的に向かっているのである。

社会統合論(Social Embeddedness)

人間は社会的動物であることから、人間の行動は、すべて対人関係に影響を及ぼす。アドラー心理学では、人間が抱える問題について、全体論から人間の内部に矛盾や葛藤、対立を認めないことから、人間が抱える問題は、すべて対人関係上の問題であると考える。

人間は人間社会において生存しているものであって、その意味で社会に組み込まれた社会的存在なのである。社会的存在であるので、対人関係から葛藤や苦悩に立ち向かうことになるが、個人の中では分裂はしていなくて一体性のある人格として行動している。すべての行動には対人関係上の目的が存在している。社会に統合するというよりも、最初から社会的存在なのである。

仮想論(Fictionalism)

アドラー心理学では、全体としての個人は、相対的マイナスから相対的プラスに向かって行動する、と考える。しかしながら、それは、あたかも相対的マイナスから相対的プラスに向かって行動しているかのようである、ということであって、実際に、相対的にマイナスの状態が存在するとか、相対的にプラスの状態が存在するとかいうことを言っているのではない。人間は、自分があたかも相対的マイナスの状態にあるように感じているので、それを補償するために、あたかも相対的プラスの状態を目指しているかのように行動するのである。

これは哲学における認知論の問題である。ただし、「認知」という用語の使い方については、基礎心理学(臨床治療を直接の目的としない研究)の20世紀後半以降の主流派であるところの認知心理学における「認知」とは大きく異なることに注意が必要である。

僕は、理解するまでに結構時間がかかりました。皆様はご理解いただけたでしょうか。

「端的にわかりやすくまとめるって大変だなぁ」と思わせていただきました。

ここでは4つしかないけど、実際の5つの基本前提は以下の内容です。

【アドラー心理学】5つの基本前提
  1. 目的論
    意識か無意識かは関係なく、人間の行動にはすべて目的があるという考え方
  2. 全体論
    人間の心と体は分割できない全体としてとらえているという考え方
  3. 認知論(仮想論)
    私たちは現実そのものではなく、現実を自ら意味づけ解釈しているという考え方
  4. 社会統合論(対人関係論)
    人間は社会的な存在であり、絶えず影響を与えあっているという考え方
  5. 個人の主体性(自己決定性)
    自分の行動を自分で決めることができるという考え方

ここからは、それぞれの意味合いについて「アドラーの言葉」を交えながら解説していきます。

【目的論】原因論は言い訳論。人間の行動にはすべて目的があります。

「目的論」に関するアドラーの言葉
  • 人は過去に縛られているわけではない。あなたの描く未来があなたを規定しているのだ。過去の原因は「解説」にはなっても「解決」にはならないだろう。
  • 敗北を避けるために、時期に人は自ら病気になる。「病気でなければできたのに・・・」そう言い訳して安全地帯へ逃げ込み、ラクをするのだ。
  • 遺伝もトラウマもあなたを支配してはいない。どんな過去であれ、未来は「今ここにいるあなた」が作るのだ。
  • 感情は車を動かすガソリンのようなもの。感情に「支配」されるのではなく「利用」すればよい。

私達は「過去の出来事があったからこのような行動をとった」という『原因論』に縛られて生きておりますが、アドラーは「人の行動には必ず目的がある」という『目的論』を教えてくれました。

行動といっても、身体的な動作や言葉だけを述べているのではありません。感情や病気すらも、私たちは目的を持って利用しているのだとアドラーは述べられております。

【目的の明確化】うつ病の克服に目的論は効果的?・・・かも・・・

たとえば、うつ病の方がアドラーに相談に来たとします。

原因論では、「過去にこんなつらいことがあってうつになったんだね」と励ますかも知れません。しかし目的論を提唱されたアドラーは「どうしてうつ病をやってるの?」と尋ねるでしょう。

一見、メチャクチャな質問のように思われるかも知れません。厳しい質問のように思われるかも知れません。しかし、ただ寄り添う原因論では気づきが少ないのが現状でしょう。

しかし、うつ病の目的を明確にすることによって新たな気づきが生まれます。

非常に困難なことですが、「自分から変わっていく」という意識を目的論では植え付けることができます。それが根本治療につながる可能性もありますよね。

言い訳できない心理学。だからこそ効果的な現実があります

非常に厳しい表現ですが、目的論は「言い訳禁止論」とも捉えることができます。

原因論の立場では、「過去にこんな経験があって…」「過去のトラウマが…」という理由で挑戦できないという流れになります。

しかし、目的論では「挑戦できない」ではなく「挑戦しない」という選択を目的に沿って選んだことになります。

そもそも「〜〜できない」という発言には環境や他者の責任になることが多いです。

私達は自分の人生を目的を持っていつでも選ぶことができます。しかし、「〜〜できない」の理由として家庭環境や地震の能力を挙げる方が非常に多いように感じます。

それは、「できない」ではなく「しない」という目的を選んでいます。今すぐ死ぬ気になって努力すれば叶うことは非常に多いですよ。

このように、【目的論】は非常に厳しい考え方かも知れません。しかし、あなたが変わるヒントを与えてくれるので大切にしたいですね。

【全体論】言い訳しても意味がない。行動に答えが出ています。

「全体論」に関するアドラーの言葉
  • 意識と無意識、理性と感情が葛藤する、というのは嘘である。「わかっているけどできません」とは、単に「やりたくない」だけなのだ。
  • 「無意識になってしまった・・・」「理性が欲望に負けて・・・」とは、自分や相手を欺くための「言い訳」でしかない。
  • 感情を言い訳に利用してはならない。つべこべ言わずに、やるべきことをやるのだ。あなたがどう感じるかなど、関係ない。

全体論では、人(個人)はそれ以上部分割できない存在であると考えます。心と体、理性と感情、意識と無意識などの各要素に矛盾や対立は起きません。私たちは目的を達成するために体や理性、意識などの要素を使用しております。

【全体論】私達は言い訳できないことを教えてくれています

「本当はダメだとわかっているんですが・・・」と言ってダイエット中に大食いをしたり、時には悪事をはたらくこともあるでしょう。

そのような気持ちを抱くこともありますよね。

しかし、全体論ではそのような言い訳は通用しません!

心と体は分割できないのですから、言葉でどれだけ心の中の言い訳をしていても、行動を見れば目的がわかります。

「わかっちゃいるけどやめられない」のは、結局のところやめる気がないのです。

全体論を活かして行動を変えていきましょう

私たちが心で何を思っていても、行動を見れば目的がわかります。

感情を言い訳にする生き方はやめましょう。

自分が主人公の人生を、自分の目的を大切に歩みましょう。

全体論は感情に揺さぶられて歩みを止めてしまう人生から脱するヒントになりますよ。

【認知論】誰もが違った色メガネをかけて他者も自分も判断しています

「認知論」に関するアドラーの言葉
  • 「みんなが私を嫌っている」「今回ダメだったから次もダメだ」という思い込みは冷静に立証を試みれば消えていく。
  • 感情を変えようとしても無駄である。感情の根本にある「性格」を変えるのだ。「性格」を変えずして感情を変えることはできない。
  • 失敗という「体験」が問題なのではない。できないという「思い込み」が問題なのだ。勇気がくじかれたことこそが問題なのである。

「事実」すら見えなくするほどの力が「思い込み」にはあります

実は、誰もが客観的な事実ではなく、主観的な思い込みにより物事を判断しています。

アドラーの言葉にありますように、「みんなが私を嫌っている」「今回ダメだったから次もダメだ」というのは完全な思い込みですよね。

同じように、「みんなに責められている」と勝手に勘違いしたり、思い込みによって極端に自信がない方も多くおられます。

くだらない思い込みによって行動を制限することを選ばないようにしましょう。

同じ出来事が起こっても「思い込み」による「意味づけ」は人によって異なります

街を歩いていたら、向こうから歩いてくるお坊さんがあなたを見てクスッと笑いました。あなたはどう感じるでしょうか。

「私ほど綺麗な人を見たことがないのね」

「私の顔にゴミでもついてたかしら」

「私を見て面白い笑いのネタを思いついたのかしら」

それぞれ違う反応を感じるでしょう。

同じ出来事であっても意味づけはみんな違います。だからこそ、自分の思い込みを他者に押し付けないようにしないといけませんね。

【対人関係論】「社会を生きること」は「対人関係を生きること」です。

「対人関係論」に関するアドラーの言葉
  • 健全な人は、相手を変えようとせず自分が変わる。不健全な人は、相手を操作し、変えようとする。
  • すべての悩みは対人関係の課題である。仙人のような世捨て人さえも、実は他人の目を気にしているのだ。
  • あなたのために他人がいるわけではない。「〇〇してくれない」という悩みは自分のことしか考えていない何よりの証拠である。
  • 陰口を言われても、嫌われても、あなたが気にすることはない。「相手があなたをどう感じるか」は相手の課題なのだから。

「対人関係論」は「社会統合論」。逃げられないから向き合いましょう

アドラーは「すべての悩みは対人関係の課題である」と言い切っておられますよね。

また、社会に生きている限り対人関係に挑まなくてはならないのではなく、対人関係の方からやってくるというのがアドラーの捉え方です。つまり、生きている限り対人関係の悩みから逃げることはできないんですね。

それにも関わらず、対人関係から逃げる生き方を選んでいませんか?

逃げるのは簡単です。しかし、それでは悩みがなくなることは絶対にありません。

逃げ癖がある方にとって厳しい言葉ですが、対人関係には積極的に向き合う生き方を選びましょう。

「自分が話しやすい人とだけ関わる」という生き方はあなたを孤独にしますよ。

無意識な自己中心性によって傷付くのはあなた自身という真実

アドラーは「あなたのために他人がいるわけではない」と教えてくれております。すべての方が自分自身の人生を生きているので当然のことですよね。

それにも関わらず、「あの人は気持ちをわかってくれない」「あの人は期待に応えてくれない」という他者への不満ばかりを表現する人生はやめましょう。

それは単なるあなたの自己中心性です。

自分のことばかり考えて生きるのは健全ではありません。アドラー心理学のゴールは「共同体感覚」ですが、それには他者との協同関係が必要不可欠です。

むしろ、「他者の期待に応え、他者の気持ちを満たしていく」生き方をしましょう。それだけであなたの人生は格段にラクになります。

【個人の主体性】すべてあなたが自己決定できるのが人生です。

「個人の主体性」に関するアドラーの言葉
  • 人間は自分の人生を描く画家である。あなたを作ったのはあなた。これからの人生を決めるのもあなた。
  • たとえ不治の病の床にあっても、天を恨み泣き暮らすか、周囲に感謝し余生を充実させるか、それは自分で決めることができる。
  • 「親が悪いから」「パートナーが悪いから」「時代が悪いから」「こういう運命だから」責任転嫁の典型的な言い訳である。
  • 誰かが始めなくてはならない。見返りが一切なくても、誰も認めてくれなくても、「あなたから」はじめるのだ。
  • 勇気がある人は、努力して険しい道を乗り越える。勇気がない人は、努力を避け、楽ちんな抜け道を探す。抜け道の先に待っているのは、みじめな未来でしかない。

今までの人生はあなたの選択。これからの人生も決められる

先に挙げた「目的論」や「全体論」と内容が被ってくるところもありますが、「個人の主体性」は「人は自分の行動を自分で決めている」という考え方であります。

アドラーは「人間は自分の人生を描く画家である。あなたを作ったのはあなた。これからの人生を決めるのもあなた」という言葉を残されました。

みなさまは自分の人生を他者の責任にしていないでしょうか。もしも心当たりがあるなら、今すぐその考えは捨てましょう。笑

自分の人生の責任は、今までの自分の選択です。逆に言えば、これからの人生もあなたが選ぶことができます。

だからこそ、私たちの人生はいつでも変えることができる。希望を大切にした人生をお互いに歩ませていただきましょう。

【勇気の心理学】私たちが勇気を持って選ぶだけで希望の未来が叶います

アドラーは「勇気がある人は、努力して険しい道を乗り越える。勇気がない人は、努力を避け、楽ちんな抜け道を探す。抜け道の先に待っているのは、みじめな未来でしかない」と仰っております。

困難や災難を努力して乗り越える人生か、そこから逃げ続けて成長しない人生か、自由に選ぶことができますよね。私たちに与えられた尊い権利です。

みなさまはどのような人生を歩まれる予定でしょうか?

誰もが「なんで私だけがこんな目に?」と思うような経験を重ねております。実は、私自身も、知人にお話ししたら驚かれるような人生を歩んできました。

しかし、後になって考えますと、困難や災難を乗り越えられた時に「有難さ」を感じることがあるんですね。何事も一人で乗り越えることはできませんし、様々な方の支えに気づけるのは勇気を持って挑戦した時です。

特に、試練を与えてくれる人は有難いです。

アドラーは努力を避ける人生を「みじめな未来」と仰っております。この言葉を私ごとと捉え、「本当に今のままの私でいいのか?」という問いを大切に、すべて自己決定できる人生を歩ませていただきましょう。

アドラー心理学を勉強するのに特にオススメの本を紹介します

実は、漫画もオススメです